多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ (岩波新書)
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多神教と一神教―古代地中海世界の宗教ドラマ (岩波新書) 定価 777円 新品 777円から 中古 117円から |
この商品の感想
仮定をもとにした一冊
オリエント諸宗派の中から、世界で類を見ない「一神教」がどのように生まれてき
たのかを考察した本……なのだが、あまり学術的ではなく、「〜と感じられてなら
ない」「〜に違いない」みたいな、推論で書いてあってホントかー?みたいな感
想。エジプトのイクナートン王のアトン神の信徒の子孫=ヘブライ人ってのは、か
なり怪しい説だなぁ。影響はあったと思うんだけど…
でも、「古代の人の宗教に対する《心性》がどのように変化していったか」という
観点から、信仰の流れを見るというのは面白いと思いました。しかし、それもどう
やら「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」という本からのまとめ?(みたい)
筆者によれば、紀元前1000年ごろから、アルファベット文字の普及などにより古代
人の心性に変化が生じ、それまでの信仰の仕方が変質していき、やがて普遍神から
一神教の発生をみた、ということらしい。
しかし、そのような仮説であれば、別に他の地域からも一神教が現れても不思議で
はないのに、歴史上「唯一神」を発明したのは地中海地方のみ。そこらへんの疑問
には答えておらず、首肯できないところがありました。
ポンペイの神殿を巡る記述とか、イメージを喚起してくれるところは多く、読みや
すくて楽しく読めましたが、学術的なところはちょっと食い足りなかったかな、と
いう感じ。
古代人の”心性”の推察に基づいた、一神教成立理由の興味深い仮説。
シュリーマンがトロイを発掘して神話が史実となったように、ホロメスの詩が絵空事でないならば、そこに古代人の心性が甦る、と著者は言う。本書のテーマは、先史時代から慣れ親しんできた多神教の神々の世界から、人類史的には例外的ともいえる一神教への道が開かれたのは一体なぜかという問いである。
著者の答えは、紀元前1000年期の地中海世界に現れた二つの状況、即ち、社会的危機と抑圧、及びアルファベット文字の普及、がそれをもたらした契機になったと言うものである。これらが人々をして神々の声を聞こえなくせしめ、姿も見えなくし、不幸の原因ではなく意味を問うようにした、そして、神の声を失った人間の意識の裂け目から、自らに向けられた眼とも言うべき存在が出現してきた。だから、そのような人々は、生きる希望が必要である人間として、超越的で排他的で規範と倫理を要求する唯一神の存在を信じるに至った、と言うのだ。
著者は、紀元前20世紀頃から帝政ローマに至るまでの地中海世界(メソポタミア、エジプト、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど)における叙事詩、文書、神話等を、当時の人々の心性と言う観点を重視して、時系列的に、地域連関的に、時々近代科学の知識を用いて(ここの部分はやや蛇足的と小生は思いましたが)解釈して行き、そのような仮説を提出している。この本は、歴史上の知識と言うよりも、そこのところ、つまり昔の人の”心性”と言う観点から歴史を解釈するという面白さ、有効さを、巧みに且つ興味深く教えてくれていると思います。
文字言語という神
今世紀の初頭からやたらとホットな「一神教問題」に関係するかと思って一読してみたが、やや期待はずれであった。「やや」ではあるが。著者の専門である古代ローマを中心に、メソポタミア、エジプト、ギリシアなどの生活や思想に根づいた、あくまでも具体的で目に見え耳に聞こえ、そして複数形である「神々」の実相を丁寧に説明していき、やがてユダヤ教という「一神教」が登場してくる歴史的な条件を探って行くのだが、そこで登場する神様たちの数が多くあまり馴染みのないこともあって、これが読み通すのにけっこう苦労するのである。それは「神々」の「声」が聞こえない人間には共感できない世界だからだよ、という、いわばこちら側の能力の不足も読みの困難の原因であろうか。
問題の、「一神教」が発生した原因についての仮説は、期待通り興味ぶかかった。根本的な理由は二つ。アルファベットという汎用性の高い表音文字の開発・普及と、そして何よりユダヤ民族の「危機と抑圧」によるルサンチマンの裏返し的な創造力である。後者はフロイト=岸田秀の仮説を歴史学者の観点から再検討したものだが、おもしろいと思ったのは前者の方だ。古代文明が複雑化しすぎたがゆえに、多様な文字言語の整理統合が進む中で、とりわけ便利なアルファベットが主導権を握った。文字の一元化は神々の一元化とパラレルに進行し、やがて「神々」の「沈黙」の続く悲劇の時代を生きる人々の魂の空白に、唯一の絶対的な〈神〉が宿る。ここから、現代のIT社会における「神」のゆくえなど、いくつもの論点が浮上してくる説である。または、一神教の哲学バージョンともいわれるプラトン哲学とのからみでもっとつっこんで論じて欲しかったのだが、それは古代史家である著者には無理な要求か。やはり、勝手な期待のしすぎであったようだ。
地中海―宗教編
古代地中海世界を宗教的な観点から心性を結びつけています。
古代の世界では神々の声が聞こえたのだが、次第に聞こえなくなりました。
その結果救済宗教が活発になり、その中のキリスト教が勢力を伸ばしたと言います。
読後の感想として、古代の人々が神々の声を聞くという体験なしには
一神教は生まれなかったのではないかと思っています。
オリエント諸宗派の中から、世界で類を見ない「一神教」がどのように生まれてき
たのかを考察した本……なのだが、あまり学術的ではなく、「〜と感じられてなら
ない」「〜に違いない」みたいな、推論で書いてあってホントかー?みたいな感
想。エジプトのイクナートン王のアトン神の信徒の子孫=ヘブライ人ってのは、か
なり怪しい説だなぁ。影響はあったと思うんだけど…
でも、「古代の人の宗教に対する《心性》がどのように変化していったか」という
観点から、信仰の流れを見るというのは面白いと思いました。しかし、それもどう
やら「神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡」という本からのまとめ?(みたい)
筆者によれば、紀元前1000年ごろから、アルファベット文字の普及などにより古代
人の心性に変化が生じ、それまでの信仰の仕方が変質していき、やがて普遍神から
一神教の発生をみた、ということらしい。
しかし、そのような仮説であれば、別に他の地域からも一神教が現れても不思議で
はないのに、歴史上「唯一神」を発明したのは地中海地方のみ。そこらへんの疑問
には答えておらず、首肯できないところがありました。
ポンペイの神殿を巡る記述とか、イメージを喚起してくれるところは多く、読みや
すくて楽しく読めましたが、学術的なところはちょっと食い足りなかったかな、と
いう感じ。
古代人の”心性”の推察に基づいた、一神教成立理由の興味深い仮説。
シュリーマンがトロイを発掘して神話が史実となったように、ホロメスの詩が絵空事でないならば、そこに古代人の心性が甦る、と著者は言う。本書のテーマは、先史時代から慣れ親しんできた多神教の神々の世界から、人類史的には例外的ともいえる一神教への道が開かれたのは一体なぜかという問いである。
著者の答えは、紀元前1000年期の地中海世界に現れた二つの状況、即ち、社会的危機と抑圧、及びアルファベット文字の普及、がそれをもたらした契機になったと言うものである。これらが人々をして神々の声を聞こえなくせしめ、姿も見えなくし、不幸の原因ではなく意味を問うようにした、そして、神の声を失った人間の意識の裂け目から、自らに向けられた眼とも言うべき存在が出現してきた。だから、そのような人々は、生きる希望が必要である人間として、超越的で排他的で規範と倫理を要求する唯一神の存在を信じるに至った、と言うのだ。
著者は、紀元前20世紀頃から帝政ローマに至るまでの地中海世界(メソポタミア、エジプト、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど)における叙事詩、文書、神話等を、当時の人々の心性と言う観点を重視して、時系列的に、地域連関的に、時々近代科学の知識を用いて(ここの部分はやや蛇足的と小生は思いましたが)解釈して行き、そのような仮説を提出している。この本は、歴史上の知識と言うよりも、そこのところ、つまり昔の人の”心性”と言う観点から歴史を解釈するという面白さ、有効さを、巧みに且つ興味深く教えてくれていると思います。
文字言語という神
今世紀の初頭からやたらとホットな「一神教問題」に関係するかと思って一読してみたが、やや期待はずれであった。「やや」ではあるが。著者の専門である古代ローマを中心に、メソポタミア、エジプト、ギリシアなどの生活や思想に根づいた、あくまでも具体的で目に見え耳に聞こえ、そして複数形である「神々」の実相を丁寧に説明していき、やがてユダヤ教という「一神教」が登場してくる歴史的な条件を探って行くのだが、そこで登場する神様たちの数が多くあまり馴染みのないこともあって、これが読み通すのにけっこう苦労するのである。それは「神々」の「声」が聞こえない人間には共感できない世界だからだよ、という、いわばこちら側の能力の不足も読みの困難の原因であろうか。
問題の、「一神教」が発生した原因についての仮説は、期待通り興味ぶかかった。根本的な理由は二つ。アルファベットという汎用性の高い表音文字の開発・普及と、そして何よりユダヤ民族の「危機と抑圧」によるルサンチマンの裏返し的な創造力である。後者はフロイト=岸田秀の仮説を歴史学者の観点から再検討したものだが、おもしろいと思ったのは前者の方だ。古代文明が複雑化しすぎたがゆえに、多様な文字言語の整理統合が進む中で、とりわけ便利なアルファベットが主導権を握った。文字の一元化は神々の一元化とパラレルに進行し、やがて「神々」の「沈黙」の続く悲劇の時代を生きる人々の魂の空白に、唯一の絶対的な〈神〉が宿る。ここから、現代のIT社会における「神」のゆくえなど、いくつもの論点が浮上してくる説である。または、一神教の哲学バージョンともいわれるプラトン哲学とのからみでもっとつっこんで論じて欲しかったのだが、それは古代史家である著者には無理な要求か。やはり、勝手な期待のしすぎであったようだ。
地中海―宗教編
古代地中海世界を宗教的な観点から心性を結びつけています。
古代の世界では神々の声が聞こえたのだが、次第に聞こえなくなりました。
その結果救済宗教が活発になり、その中のキリスト教が勢力を伸ばしたと言います。
読後の感想として、古代の人々が神々の声を聞くという体験なしには
一神教は生まれなかったのではないかと思っています。
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