ダイバー漂流 極限の230キロ (新潮OH!文庫)

ダイバー漂流 極限の230キロ (新潮OH!文庫)
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定価 510円
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この商品の感想

気まぐれな海の女神のいたずらだったのか・・・。
 僕は長時間をかけて海で泳いだり、素潜りして遊ぶのが大好きだ。長い時間泳いでいると、徐々に身体が海水に溶け出していき、どこまでが自分の身体で、どこからが海なのかハッキリしないような不思議な感覚になるが、それがまた心地よいのだ。しかし、本書を読んだ後は「さすがにここまでの遠泳はしたくないな」とつくづく思った。
 このノンフィクション物語の主人公は新島でのダイビング中に黒潮に流され、身一つで銚子沖まで230キロに及ぶ漂流をする。普通ならば死んでもおかしくない状況だが、主人公の楽天的な性格(何と漂流中に加山雄三さんの『光進丸』を歌っていたというから凄い!)、彼に生きる勇気を与えてくれたクジラや様々な海洋生物との出会い、そして幾つかの幸運な出来事に恵まれて、彼はマグロ漁船に救われる。
 主人公が助かった背景には幾つもの小さな奇跡があったわけだが、それを呼び込んだのは彼の天性の明るさだったのかも知れない。あるいは、この遭難から救出に至るまでの一連の出来語事は、気まぐれな海の女神のいたずらだったのだろうか? いずれにせよ、海と関わる全ての人に教訓を与えてくれる一冊だ。

ダイビングの専門家によるダイビング事故の検証
漂流記というよりもダイビング事故に関するノンフィクションとしての
読み甲斐があります。
漂流中の心理描写においては、漂流者本人の記述ではないだけに、
今ひとつ臨場感にかけるところがあるのは否めないでしょう。
そのあたりの精神状況を知るには、やはり漂流者本人による自伝
(いくつもあるのでどれとは言いませんが)を読むべきだと思います。
とは言え、漂流者の『助かるはずだという楽天主義』、
これだけは人生見習うべきところが多いと思いました。

「性格」と「運」と「失敗しないこと」。
御蔵島で潮流に捕らえられたダイバーが、銚子沖で漁船に保護された。
漂流時間3日、距離230km。
彼はどうやってこの苦行に耐え、生き延びたのか、に興味を持った。
海を職業にするのでこそないけれど、毎週海に入る生活なので、万が一の場合のサバイバル術には興味津々なのだ。

が、彼は存外に何もしていない。水を得る、食料を得る努力もしない。
あまり心配もしない。
太平洋に浮いてて、「漂流中、サメのことは思い出しもしなかった」というから大した心臓だ。
夜光虫で遊んだり、カニを仲間にしたり、クジラに助けたもらおうと傍に泳ぎ寄ったり、結構呑気に漂流している。
浮力体の浮力を手放す、体温を維持するためのウェットを脱ぐ、など「失敗」こそないが、彼が生きていたのは「性格」と「運」によるものらしい。

海のサバイバル、って努力してなんとかなるもんじゃないのかもしれない。
流されちゃったら「なるようになるさ」って思うしかないんですかね。

稀有なパターン
自身、結構この手の書物。つまり、ノンフィクションの漂流記等所謂サバイバル本は結構読んでいる人間なのだが、この本が最初目に入った時ちょっと「おや?」と感じた。多くのサバイバル記は勿論極限状態の描写が多く、大抵1ヶ月程度の漂流パターンが多く(たか号漂流等がそれである。世界に目を向ければ3ヶ月以上というケースもざら)この本の場合1週間にも満たない。それでも「極限」と名を冠されていたので微妙に腑に落ちなかったのである。

しかし、本書を読んだ時その意味がようやく理解できた。つまり、この本の主人公であるダイバーは船等に搭乗して漂流したわけではなく、生身の体一本で大海洋を漂流していたのである。説明では大部分がこの漂流パターンだと3日以内に命を落とすと書かれていたが、その意味も明白になった。

まず物理的な面では、船での漂流と異なり生身の体が海水と直接接する訳で、体温調節が殆ど不可能になる事と全体的な体力の消耗。それと勿論ちょっとした時化があっても一貫の終わりであろう。
更に重要なのが精神的な要因だ。まず本書にも触れられているが、陽が落ちて
周囲が闇に囲まれた時の恐怖感と絶望感である。他書のサバイバル本でも夜に対する恐怖が良く語られていた。これらは人間の本能的感覚であり避けようも無かろうが、本書は特に身一つでぷかぷか浮いているわけでその恐怖は更に深まっただろう。そして深さ数百数千メートルの海洋に、つまり底無しの海面に足が接地できない恐怖も語られていた。客観的に見れば非体験者なら中々飲み込めない恐怖だと思うが、地に足を付けて立つという常識的な公式が当てはまらない不可思議なレベルでの恐怖と言えば理解してもらえるだろうか?
そしてまた、鮫等の恐怖にも言及されていた。これもまた船での漂流ならまだしも体だけで漂っている訳で、当然の恐怖なのかもしれないが本書では常に鮫等の恐怖と戦っていたことが分かる。

これだけ書いても一般的な船での漂流とはまるで次元が違うという事がお分かりだろう。例えるなら積みこみ食料や水分によって運命はケースバイケースであろうが、このような体だけでの漂流1日の負荷は一般的な船上での5日分の負荷に相当するのでは?とまで思えてしまう。

ダイバー漂流…
私はふだん潜水もしないしこの事件のことも知らなかったのですが、ふとしたきっかけからこの本を読みました。最初読んだときは、確かに物語の途中で筆者の説明がよく入るので臨場感にかけると思いましたが、何回か読み直すうちにあまり気にならなくなり、逆に説明が面白くありがたいと思うようになってきました。例えば海水は真水で薄めれば飲んでも支障はないことや、ホメリック号に関する人種差別に関する話など、考えさせられることもあり、読んでとてもよかったと思います。

私は、このような本は一種の教訓としてとらえています。漂流や遭難は、確率はかなり低いにせよ誰にでも起こり得ることであり、その時に生きる望みを捨てないということが、言うのは簡単かもしれませんがやはり大事だと思うのです。この本を読んで改めてそう実感しました。堅苦しいことを書いてしまいましたが、読み物としてふつうに楽しめたので星5つにしました。

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