五胡十六国―中国史上の民族大移動 (東方選書)
五胡十六国―中国史上の民族大移動 (東方選書) 定価 1,680円 新品 1,680円から 中古 1,250円から |
この商品の感想
五胡十六国を正当に評価する
世界史などでもぞんざいな扱いを受けているこの時代であるが、単に秦漢と隋唐のつなぎというだけではない。これを冷遇するのは漢民族中心主義や中華主義によるものであるが、現代ではこれらの見方は解体されつつある。
秦漢帝国の崩壊後、その枠を超えて様々な民族が流入興亡した時代であり、たいへん流動性とエネルギーにあふれた時代であった。その隋唐帝国への文化的・政治的な功績は重大であり、日本や朝鮮にも影響は残っている。それらはこれまで「混乱」「動乱」などと否定的に語られてきたが、より肯定的にとらえなおされるべきものである。
本書はこれを西洋史におけるゲルマン民族移動に相当するものと位置づけている。他の研究者にも同様の見方をするものもあり、大変興味深いものである。しかしその理論化は東洋史と西洋史を安易に平行化してよいのかという問題を含め、まだこなれたものではないと思われ、今後の研究が期待される。
なりは小さくとも:中国史のミッシングリンク
中国史の中で、最も冷淡に扱われていると思うのがこの五胡十六国時代である。さまざまな国が短期間で興亡を繰り返す上に、支配者の名前だって赫連勃勃とか禿髪烏孤だとかどう読んでいいのかすら判らない連中が何人もいる。中国史の書物でこの時代にかかるものは、大抵成漢、後趙、前秦くらいと北魏の記述をして、あとはさらっと流してしまうのだが、この本は十六国のみならず総計二十二国の興亡について、系図や地図を配して詳しく述べている。周辺諸国との関係、仏教の伝播などについても要を得た記述があり、小さな書物であるわりに内容は非常に豊富で、この時期の概説書としては非常に優秀と思う。ただひとつ残念なのは、ものすごく固有名詞の多く出てくる本であるのに索引がないこと。参照に不便きわまりない。でも、この本で中国史の欠けたピースが嵌った気がした。
複雑極まる事実関係を上手に整理
五胡十六国というのは、4世紀初頭の西晋滅亡から5世紀前半の北魏による華北統一に至るまでの間、華北を舞台に繰り広げられた諸民族の興亡と政治的・社会的動乱を言います。いわゆる魏晋南北朝史の一部を成しますが、必ずしもメジャーな分野ではありません。
さて、本書は、一般向けの概説書として五胡十六国を正面から取り上げた珍しい本です。後漢朝の少数民族政策から筆を起し、「五胡」とか「十六国」とかの正確な意味、各政権別の興亡概史、この時代の中原を取り巻く国際環境と文化面での交流、そして民族移動の概況とそれに伴う社会的な影響などを紹介しています。
この時代の展開は「超」がつくほど複雑ですが、著者は諸少数民族政権の歩みを根気良くフォローし、この複雑な状況を一般読書向けに丹念に解きほぐして提示しようとしています。事実関係はたいへん巧く整理されており、辞典的にも活用できるのではないかと思います。
反面、マイナーな固有名詞が次から次へと登場し、読んでいて結構ツライものがあります。但し、これは著者の責任ではなく、ホントにマイナーな分野なので仕方がありません。我慢して読みましょう。
また、筆者は、とかく否定的に捉えられがちな五胡十六国につき、より積極的な面を提示したいという問題意識をお持ちのようですが、こうした意識が、事実関係の叙述の中に埋没してしまっている観があります。この時代の意義や後世への影響の度合いなど、著者自身の主張をもう少し前面に出しても良いのではないかと思いました。
五胡十六国についてまとまった概説書
この本は、五胡十六国について、その興亡を概説するだけでなく、実際は、16ヵ国以上の国が興亡を繰り返したため、中国の史書で五胡十六国についての認識の隔たりがどのようにあるか整理したり、五胡諸国が自分の国をどのように認識していたか、たとえば、天王号は、皇帝に準ずる地位・称号であること、自分の国を晋や他の五胡諸国との関係で五行相克(五徳の運次)を意識していたことなど、意外に知られていないが中国史を学ぶ上で落とせない視点をフォローしている。
世界史などでもぞんざいな扱いを受けているこの時代であるが、単に秦漢と隋唐のつなぎというだけではない。これを冷遇するのは漢民族中心主義や中華主義によるものであるが、現代ではこれらの見方は解体されつつある。
秦漢帝国の崩壊後、その枠を超えて様々な民族が流入興亡した時代であり、たいへん流動性とエネルギーにあふれた時代であった。その隋唐帝国への文化的・政治的な功績は重大であり、日本や朝鮮にも影響は残っている。それらはこれまで「混乱」「動乱」などと否定的に語られてきたが、より肯定的にとらえなおされるべきものである。
本書はこれを西洋史におけるゲルマン民族移動に相当するものと位置づけている。他の研究者にも同様の見方をするものもあり、大変興味深いものである。しかしその理論化は東洋史と西洋史を安易に平行化してよいのかという問題を含め、まだこなれたものではないと思われ、今後の研究が期待される。
なりは小さくとも:中国史のミッシングリンク
中国史の中で、最も冷淡に扱われていると思うのがこの五胡十六国時代である。さまざまな国が短期間で興亡を繰り返す上に、支配者の名前だって赫連勃勃とか禿髪烏孤だとかどう読んでいいのかすら判らない連中が何人もいる。中国史の書物でこの時代にかかるものは、大抵成漢、後趙、前秦くらいと北魏の記述をして、あとはさらっと流してしまうのだが、この本は十六国のみならず総計二十二国の興亡について、系図や地図を配して詳しく述べている。周辺諸国との関係、仏教の伝播などについても要を得た記述があり、小さな書物であるわりに内容は非常に豊富で、この時期の概説書としては非常に優秀と思う。ただひとつ残念なのは、ものすごく固有名詞の多く出てくる本であるのに索引がないこと。参照に不便きわまりない。でも、この本で中国史の欠けたピースが嵌った気がした。
複雑極まる事実関係を上手に整理
五胡十六国というのは、4世紀初頭の西晋滅亡から5世紀前半の北魏による華北統一に至るまでの間、華北を舞台に繰り広げられた諸民族の興亡と政治的・社会的動乱を言います。いわゆる魏晋南北朝史の一部を成しますが、必ずしもメジャーな分野ではありません。
さて、本書は、一般向けの概説書として五胡十六国を正面から取り上げた珍しい本です。後漢朝の少数民族政策から筆を起し、「五胡」とか「十六国」とかの正確な意味、各政権別の興亡概史、この時代の中原を取り巻く国際環境と文化面での交流、そして民族移動の概況とそれに伴う社会的な影響などを紹介しています。
この時代の展開は「超」がつくほど複雑ですが、著者は諸少数民族政権の歩みを根気良くフォローし、この複雑な状況を一般読書向けに丹念に解きほぐして提示しようとしています。事実関係はたいへん巧く整理されており、辞典的にも活用できるのではないかと思います。
反面、マイナーな固有名詞が次から次へと登場し、読んでいて結構ツライものがあります。但し、これは著者の責任ではなく、ホントにマイナーな分野なので仕方がありません。我慢して読みましょう。
また、筆者は、とかく否定的に捉えられがちな五胡十六国につき、より積極的な面を提示したいという問題意識をお持ちのようですが、こうした意識が、事実関係の叙述の中に埋没してしまっている観があります。この時代の意義や後世への影響の度合いなど、著者自身の主張をもう少し前面に出しても良いのではないかと思いました。
五胡十六国についてまとまった概説書
この本は、五胡十六国について、その興亡を概説するだけでなく、実際は、16ヵ国以上の国が興亡を繰り返したため、中国の史書で五胡十六国についての認識の隔たりがどのようにあるか整理したり、五胡諸国が自分の国をどのように認識していたか、たとえば、天王号は、皇帝に準ずる地位・称号であること、自分の国を晋や他の五胡諸国との関係で五行相克(五徳の運次)を意識していたことなど、意外に知られていないが中国史を学ぶ上で落とせない視点をフォローしている。
しかし、惜しいことに系図に五胡君主の諡、即位年代がなかったり、五胡諸国の遷都について地図で表さないなど、やや使いにくい面がある。また、ゲルマン民族の大移動がその後のヨーロッパの枠組みを作ったことにたいして、隋唐帝国にとっての五胡十六国の意義を位置づけようとしているが、本文を読む限り著者の意図が成功しているとは思えない。この種の本ならではの貴重な写真を掲載し表を多用してこの時代についての読者の理解を深めようとする努力がみられ概説書としては有益である。
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